生まれも育ちも緩やかな海流沿いにある開放感溢れる港町アルベルタな俺は、生まれて初めて見る大量の雪に意識の全てを奪われていて、 隣りでポリンの仲間みたいなのを大量虐殺しているハンターの言葉は耳に届いていなかった。否、意識に届いていなかった。

「ん?何か言ったか?」
「別に。」
「そっか。」

そうですよっと語気も荒く言って、その場にどすっと座り込んでしまった彼に悪いと思わなかったこともないが、俺は自分の好奇心に負けた。
やれポリンもどきが他の冒険者を凍らせているぞ、やれ雪が風にあおられ下から舞い上がってくるぞ、やれ雪がこんなにさらさらなのは何でだ、と彼の肩を叩いては言い続けた。




どれくらいしただろうか。初めてみる雪景色の興奮が落ち着いて冷静になったら、彼への申し訳ないと言う気持ちがむくむく湧いてきて、謝らなければと慌てて横を見下ろした。
そこに居た彼は、鼻の頭まで真っ赤にして体を丸め、手をすり合せて寒さをやり過ごそうとしていた。
それもそのはずだ。
完全に観光を決め込んできた俺とは違い、動き難いからといつもの薄着なのだ。
歯の根も合わなくなってきているのに気を遣っているのか意地なのか、多分後者だろうが俺にさとられまいと必死で堪えてる姿がいつもの彼からは想像できなくて思わずふきだしてしまった。

「何だよ。」
「そないに無理せーへんでも。」
「無理なんてしてない。」
「またまたー。口、真っ青やねんで?」

指をさして言うと言葉に詰まって目線を逸らされた。
そんな悔し紛れひとつすら可愛くて、俺の顔はどうしても崩れてゆく。

「もー。仕方あらへんなー。」

俺は外套の前をあけ、片側に彼を包み込んだ。
わーわー騒いでる彼の冷たい身体を両手でがっちりと抱える。

「でもこれで寒ないやろ?」

うるさいとか何とかもごもご言いながらも、寒さに負けて身を寄せてくる彼の可愛らしさと言ったらもう。
俺はたまらず、外套に潜り、身を丸める彼の頭のてっぺんにキスをした。