夜も深まってきた頃、雪でも降るんじゃないかってくらい冷たい風に逆らいながら、俺達は足早に家―ある程度金に不自由しなくなった俺達は、金をだしあってゲフェンの片隅に小さな家を買った―へとの道のりを急ぐ。
前を行く相棒の手には今回の報酬としてもらった酒。
俺の手には溢れんばかりの食材と、2人分の荷物。


今回の依頼が来たのは数日前。
遥か遠方のモロクに出向いた俺達は、報酬として差し出されたゼニーをそのまま露店で酒と食料に変えて今にいたる。
俺達がゲフェンに居を構えるようになって随分と経つ。
プロンテラなどであれば各地の料理を出す店もあるが、ここゲフェンではそうもいかない。
モロク出身の奴が以前もう1度飲みたい、としきりに言っていた酒を見かけたこの相棒がそれを買わないわけはないだろう?
そうなるとそれにあったつまみ、と言うことになり、露店商のすすめるものを吟味して抱えてきたってわけだ。




家の中はどこか浮き足だっていた。
収穫祭の、子供達の来訪を待っている時のような
聖誕祭の、サンタクロースの訪れをまっている子供のような
初めてあいまみえる敵と対峙している時のような
心踊る気持ちにさせるものがあった。



戻るやいなや、猫の手もと言うやつか、着替えもそこそこにあれやこれやと指令が下る。
皆とぎゃあぎゃあ騒ぎながら準備をしていたら大分時間がかかってしまったらしく、時計の針が重なる寸前だった。
まぁ俺達が戻ってくるのが遅かった、ってのもあるんだけどな。



俺達の土産は依頼以外ではゲフェンを離れない皆に大層喜んでもらえたようで、とりわけモロク出身の奴は抱き着かんばかりの勢いで、押し止めるのに苦労する程だった。
故郷のない俺にはわからないが、そんな嬉しそうな奴とそれをまた嬉しそうに見ている皆を見ていると、やっぱり俺も嬉しい。




ちらっと隣りを盗み見ると、麗しのプリースト殿も子供のような笑みで仲間と話していたから、俺もつられて笑顔になってしまった。
彼が嬉しいと俺も嬉しい、だなんて夢物語の中だけだと思っていたが、彼と逢って俺も夢物語の住人になったようだ。









誰かがそろそろだな、と言うと互いが互いのグラスへなみなみと酒を注いでいく。


0時を告げる鐘と同時に、俺達はグラスを派手に鳴らして祝いの言葉を口にする。




A Happy New Year!!